母の霊感
私の母は、ある種の強い霊感を持っていました。
戦後間もなくの頃、「今日、東京の叔母さんが来るよ」と、朝食の時に突然言い出し、それ迄何の音信もなかった父の叔母だけに、父も私達も、「そんなバカなこと」と笑っておりましたところ、夕刻になってひょっこりと、本当にその叔母が訪ねて来たり、ある意味で予感というのでしょうか、いろいろなことがよく当たるという面がありました。
私自身も、母について不思議な体験をしております。庭で少し大きくなった木の枝を切っていた時、突然鋸を持った手が動かなくなり、その手が鋸からさえ離れられなくなって、一本一本指を外すようにしてようやく鋸から手を放し、鋸はその枝に残したまま、やっとの思いでその場を離れることが出来ましたが、後日母が上京して来た時、何気なく庭を眺めながら、「あそこには、どうも神様がおられるような気がする。以前には、どなたかがお祀りをしておられたのではないかと思うが」と言うのです。
側に寄って、母の指さしている所を見ますと、以前に私が木の枝を切っていた所なのです。私は、その神様の上に立って、木の枝を切っていたのです。だから、手が動かなくなったりしたのでした。
私がその地に移って来た時には、すでに庭になっていましたし、その前は引揚者の寮であったということですから、おそらく戦前に住んでおられた方がお祀りしておられたのでしょう。
私としては、「ある程度大きくなった木には、霊が宿っているから、きちんとお断わりをしてから切らなければ」という気持はありましたので、その時も、木の方にはお断りをしていただけに、なぜだろうと、動かなくなった手のことを不思議に思っていたのです。
神様の上に立っていたのでは、お叱りを受けても致仕方ありませんが、その時に手が動かなくなったということ以外には、特にどうということはありませんでした。それでも、神様がいらっしゃるということが分かった以上、そのまま放置するわけには参りませんので、期限を切って、お祀りをさせて頂いたのです。
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