本当に神様がいらっしゃるなら(2)
その合格通知を頂いて出社したのは、
「一月以内に、就職するね。それも、法律に関係する仕事だよ」
と言われてから、二十九日目の月曜日でした。
司法試験という新しい講座を開設するだけあって、あれもしなければ、これもしなければということで、「この方にご連絡をしなければ」と、気にかけながらも仕事に追われているうちに、数日が過ぎてしまいました。
五日目の金曜日の午後、そろそろこの方にご連絡して、今度の日曜日あたりに、就職が出来たことのご報告を兼ねて、お宅にお伺いしようと思っていた矢先、この方が、突然勤務先に訪ねて来られたのです。
いやぁー、驚いたのなんの。まだ、就職先もお伝えしていないのにです。この広い東京の中で、そりゃあ法律関係のところに絞られるとはいえ、法律関係には弁護士さんの法律事務所もありますし、
「よくもまあ、ここがわかったものだ」と感心しておりますと、
「そりゃあ、わかるよ」と、涼しげにおっしゃられるのです。
そこで、「私がお宅にお伺いする時もそうでしたし、今回のことと言い、私のことは全部おわかりなのでしょうか」と、お伺いしますと、
「私も、それ程暇じゃないよ」と、軽く笑われ、その日ご自分の家に来られる方とか、この方が「あの人はどうしているかな」と思うと、その方の様子がわかるのだというのです。
「四六時中、君のことばかり考えているわけじゃあない」
とのことでした。それにしても、凄いものだと、ほとほと感心をしたものです。
ただ、月給は安いものでした。当時大学卒の初任給が、十一万円そこそこだったかと思いますが、私の給料は、十三万円五千円前後でしたから、あまり、公務員としての経験などは考慮されず、若干年が行っているということで決められたかと思います。途中採用なのですから、やむを得ないのかも知れません。
仕事の内容は、忙しかったけれども、おもしろかったですね。やはり、好きな法律のことをさせて頂くのですから。
それから、半年ほど経って、三月の半ばに、四月からの給与について、経営者が各
人と個別の話し合いをするということでした。もっとも、それは、
「名目だけですよ。あんなことやったって、一万円以上上がった人はいない。一万円超えた人が、ここが始まって以来というのはわからないけど、とにかく二万円以上ということは、絶対にない。最高で一万円しか上がらない。形だけみんなの話を聞いたという格好をとるだけだ」
という、職員達の専らの噂でした。
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