びっくりするほどボーナスを上げて
早速、神様にお礼は申し上げましたものの、人間というものは欲深いものです。よせばいいのに、今度は六月のボーナスの時にも、
「給与改定の時には、びっくりするほど上げて頂きまして、有り難うございました。でも、本当に神様がして下さったのかどうか、今一つ信じ切れないところがございます。本当に神様がいらっしゃるのでしたら、今度のボーナスも、びっくりするくらい与えて下さい」と言ってしまったのです。
昨年の十月の就職ですから、まだ一年も経っていないのです。ですから、二万円か三万円の小遣い程度のボーナスでも、まだ実績がないのですから文句は言えないはずです。それにもかかわらず、その時のボーナスは、五十七万円ほどでした。
十三万五千円の給料から二十一万千円の給料に上り、その二か月分よりも多かったのです。長く勤務していた人よりも、ずっと率はよかったのです。
さすがに、その封筒を受け取った時は、私の方が、一瞬震え上がってしまいました。他の人の分と比べてみましても、私の封筒の方が膨れているのです。年だけは取っていますが、私は新人です。それにもかかわらず、このようにして頂いたのです。
その夜、神棚に向かって、もちろんお礼は申し上げましたが、同時に、
「これは、いかん」と、思いました。
そこで、「自分の勝手で、二度も神様をお試しするようなことをしてしまい、本当に申し訳のないことをしてしまいました。もう、二度と申しませんので、何卒お許し下さい」
と、心よりお詫びを申し上げたのです。
このことは、後でわかったことですが、この二度で止めておいたのがよかったようです。『仏の顔も三度まで』と言われますが、三度目になりますと、やはり厳しいようですし、三度を越えますと、お叱りが出るのです。
『神様の過ちは一度だけ、人は三度まで』ということのようです。しかし、その当時は、こうしたことはまったく知らぬままに、運よく過ごさせて頂いたのでした。
仕事の方では、「日本で一番難しいと言われている司法試験のことだから、『一年目で合格者を出せ』というのは無理だろうけれども、三年目には、何とか合格者を一名でも出してほしい」と言われ、「いえ、初年度から合格者を出します」と言って、
「そう無理をしなさんな」
と、諸先生方に笑われましたが、結果的には、やはり一名とはいえ、合格者を出すことが出来、順調に進んでおりました。
しかし、やがて、名目上の学院長と、実質上の経営者との方針にずれが生じ、その狭間で気を使わなければならないことが起こり始め、三名の合格者を出したのを置き土産に退職し、自分で独立することにして、飯田橋に事務所を設けたのです。
ここでは、司法試験の他、弁理士試験の講座をも併せて行ったのです。
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