第58話 念と言霊 言葉は壁に残っている
毎日口にしている言葉、言った途端に消えて無くなるものと思ってはいませんか。
平気で言いたいことを言う人は、「自分は、口は悪いが、腹には残さないタチだ。」などと、言いわけをしがちですが、言われた相手の心にはグサリと残っていることがあります。
時に「何年も前に言われたあの言葉で、本当に傷ついた、落ち込んで立ち直れないほどだった」と言われて「えっ、あんなに前のことを、お前はそんなに根に持っているなんて・・」
それも覚えておいて欲しいことは、ころっと忘れられて、何でそんなことをと思うようなことをしつこく覚えられている・・
毎日飛び交う言葉、使わないで済ませられる日はないのに、知らずに使っている言葉が、案外自分の足かせになっていることがあります。
「言ってはならない一言を言ったばかりに、絶交になった」
これも以後、ほとんど収拾がつきませんので、本当に怖いですが、「毎日繰り返され、少しずつ蓄積されていく言葉の威力」は、案外無視されています。
しかし、気付いていないのではなく、「あの上司の顔を見ただけで、胃が痛くなった」「○○さんのキンキンした声を思い出すだけで、うんざりする」などと、実は「嫌悪感」としてけっこう反応しているのです。
言葉は、口にした途端に消えて亡くなるものと思っていますが、実はたばこの煙が、しばらくすると空気中に消えて無くなるように見えて、まわりの壁にヤニとなって残ってしまうように、言葉も周囲の壁に残っているものなのです。
最近は、受動喫煙の防止などで、新幹線やレストランなどでも喫煙席、禁煙席に分かれるようになりましたが、職場などではなかなかそこまで徹底出来にくいのか、年末などに大掃除をすると、拭いた壁の色が掃除前と変わるほどに、べっとりとヤニがついていることがあります。
掃除したときは、その汚れにうんざりして、「こんなに汚れていたのか」と驚きますが、日々発している言葉も実は同じように蓄積しています。
自分達の発していた言葉が、こんなに周囲に残っていたのかと、もしその声が聞こえたら本当に驚ろかれると思いますが、その部屋にいると、そこの壁に残っている言葉の影響を少なからず受けてしまいます。
年中ガミガミ言う上司の所では、胃腸の具合の悪い部下や、ノイローゼになる人が出やすいと言われます。実は、怒鳴っている上司の方も本当は「そこまで言うつもりはなかった」と密かに思っているのです。
ところが注意しているうちに、段々とエキサイトして、「これでもか!」というほどに怒鳴ってしまい、止めようがなくなってしまうようです。
それは注意している間に、時間が経つと周辺の壁に残っている「過去に吐いたののしりの言葉」と反応してしまうからです。だから「なんであんなに怒鳴ってしまったのだろう」というほどに相手を責めたり、罵ることになってしまうのです。
それを取り去るには、一つには油絵の絵の具を塗り重ねていくように、日々いい言葉をなるべく出していくことです。しかしこれは周辺に「悪い言葉・責める言葉・ののしりの言葉」などが、たくさん残っているときには、結構努力がいります。
言葉は、自分一人で出来るのではなく、会話ですから相手とのキャッチボールで成り立ちます。自分がどんなにいい言葉を出そうとしても、それを片っ端から否定されたり、罵られて、自分の気持ちが沈んでしまう事もあるからです。
ですからいい言葉、いい環境をその部屋の中に作りたいときには、朝一番が勝負です。会社であれば、その部屋に一番乗りして、可能であれば窓を開けて昨日の空気と入れ換えてから、(窓を閉めて)誰もいない部屋に向って、明るく「おはようございます!」と言います。
はじめは気恥ずかしくて、「何でこんな事しなければならないのだろう」と思うかもしれませんが、これはやったが勝ちです。やってみなければ分からない事ですが、いい環境で、良い仕事をしたいと思えば、今までのイライラ、セカセカから発した相手を罵る言葉に囲まれて過すマイナスから、早く切り替えて、いい言葉からなる「やる気、元気のプラスの環境」に変えていく事が本当に出来るからです。
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